妖しき文豪怪談 第一夜 「片腕」

川端康成、著 落合正幸、監督


感想
男優よろし。二枚目を使わなかったのが幸いしたと思う。本編はエロスといえばエロスだが、怪奇・耽美というには程遠く思えた。
人間の「闇」を、いけないことをしているのではないだろうか?でも、覗き見してみたいと恐る恐る垣間見る感覚。

闇夜の電灯に寄ってくる蛾のような

といえばいいのかな?・・・心描写が強いものを言葉にするのはとても難しいとつくづく思う。
まぁ、そういうものだと私は作品を読んで思っていたので、
人それぞれ印象は違うだろうけれども美しい腕の中に禁断さや儚さをあまり見いだせなかったのが惜しい。

腕への接吻と頬ずりの演技はよかった。
桜貝のような爪もそれとなくよかった。

指を舐めるのはもっと、生きている温もりを確かめるようにゆっくり舐めればよかったのに(笑
ぱくっと頬張ったところで「ん?」と違和感。なんだろう、もっと温度を確かめるためにゆっくり探るように舐めてほしかった気もする。
ばっくりしゃぶっては、豚足か鶏足を食べているようでエロスが感じられぬ(笑
そして、終盤の主人公の男の周りをぐるぐる回る車。
あれは・・・何やら陳腐だった。
単純にクエッションマークがついた。本当に分からなかった。
本で読んだあの場面だと、見当はつくが何分前後が曖昧で「・・・ここだろうか?」
と、頭の中で前の場面を回顧せねばならなかった。
違った後味の悪さ。

川端康成の作風は美しさの中にある純潔な儚さと混在するアバンギャルドが魅力であると私は思う。
どこか、寂しげな美しさであると共に気鋭さもあると思う。
独特の文節間合いと、至る所にある細かな登場人物の心理描写、景色描写の巧みさを私は好んでいる。
たとえ、其れが奇怪なものが題材になったとしても、
美しさや斬新さは損なわれていない。





が、映像である。今回の違和感はこれに尽きる。
ドラマの中であった、蕾が開き盛りを過ぎて朽ちかけた花の表現・・・あんなに雌しべと雄しべを吹き出さなくてもよかったろうにと難儀に見て取れた(汗

世界観が難しい作品を、忠実に映像にしたとあったが。
私は、忠実にしなくても良かったのではと思っている。


いつの間にか現と虚構とがごっちゃになってどっちがどうやら分からなくなる感覚がまた、その世界へ引き込まれる所以だと思っている。
残念ながら、このドラマではそうならなかった。
全てを目に見えるようにするなら、何人も受け入れるが何人の心理にもするりと入り込む際どさが欲しかった。

この作品、怪談ものの括りなのかしら・・・・?エロスは感じられる、うん。でも、怖さがどこに?
が、これはあくまでも素人の戯れた私評。
全体は、一部分が良く、配役が二枚目の流行り者じゃないのが良かった。